CHIKATABI

公開 2026-09-02

ANAとJALが羽田〜岡山でダイヤ調整|国内線で初、便数は減らず時刻だけ動く

この記事は2026年9月時点の情報です。 調整後の具体的な時刻は公表されていません。

ANAとJALが、羽田と岡山を結ぶ路線でダイヤ調整をします。国内線では初めてで、「ライバルが手を組んだ」という見出しでニュースになりました。

ただ、中身を開くと変わるのは時刻だけです。便数は減りません。 そして、日本には2社が並んで飛んでいる路線がいくつもあるなかで、最初の1本が岡山になったことには理由があります。

結論:便は減らない。動くのは時刻だけ

羽田と岡山のあいだは、ANAが5往復、JALが5往復。合わせて10往復が毎日飛んでいます。この本数は変わりません。 2026年10月25日、冬ダイヤの初日から、時刻が重なっていた便をずらします。

同じ時刻に、2社が並んでいた

岡山空港を朝7時5分に出る羽田行きが、2便あります。ANAの652便と、JALの232便です。同じ空港から、同じ行き先へ、同じ時刻に、2社が飛ばしていました。片方が1分早いという話ではなく、時刻表の上でぴったり同じです。

夕方も、逆向きも同じことが起きています。

区間 ANA JAL
岡山 → 羽田(朝) 652便 7:05 232便 7:05 同時刻
岡山 → 羽田(夕) 658便 17:20 240便 17:25 5分
羽田 → 岡山(午前) 653便 10:15 233便 10:20 5分

なぜ重なっていたのかというと、お客さんが乗りたい時間が決まっているからです。朝いちで東京に着きたい人が多ければ、そこへ寄せる。2社が同じことを考えれば、自然と同じ時刻に並びます。

ただ、並んだ結果どうなるか。朝いちで岡山を出たい人には、7時5分という選択肢が1つあるだけです。2社が飛ばしているのに、選べる時間は1つしかありません。ずらせば、同じ10往復のままで選べる時間が増えます。

なぜ今までやらなかったのか

やりたくてもできなかったからです。JALとANAが話し合ってダイヤを決めれば、独占禁止法に触れかねません。価格を2社で決めるのと、構造が似ています。

その線を、国が引き直しました。国土交通省は2026年5月に、一定の要件を満たせばダイヤの調整をしても独占禁止法上は問題ない、としています。

つまり今回の発表は、8月に急に始まった話ではありません。5月に扉が開いて、最初に出てきたのが岡山だった、ということです。

なぜ最初が岡山だったのか

東京から岡山までは、新幹線で約3時間です。

航空の世界には「4時間の壁」という言い方があります。新幹線の所要時間が4時間を切ると、多くの人が飛行機ではなく鉄道を選ぶようになる、という経験則です。官公庁が定めた基準ではありませんが、路線の強弱を見るときの目安として広く使われています。

岡山は3時間です。つまり羽田と岡山を飛ぶ便は、そもそも新幹線に対して不利な場所で戦っていました。2社で分け合う前に、飛行機という乗り物自体が選ばれにくい。

国内線は、人が戻っても赤字だった

そこへ、国内線そのものの採算が乗ってきます。国土交通省の報告書に、主要6社の国内線をまとめた数字が出ています。

2018年度を100としたとき 2023年度 2024年度
旅客数 100.9 104.7
営業損益 7.3 −15.7

旅客数はコロナ前を超えて戻りました。ところが同じ2024年度の営業損益はマイナス15.7です。人は戻ったのに、国内線は赤字でした。

戻ったのは人数で、戻らなかったのは単価です。オンライン会議が定着して、高い運賃で飛ぶ出張が減りました。そこへ燃油費・整備費・人件費の上昇と、円安による外貨建てコストの増加が重なります。

この2つを並べると、岡山が最初になった理由が見えてきます。新幹線に押されている路線で、しかも国内線全体が赤字。ここで2社が5分差の便をぶつけ合っても、傷が深くなるだけです。仲良くなったのではなく、隣に勝っても意味がない場所だから、隣と争うのをやめただけです。

同じ路線を、私たちと会社は違う目で見ている

ここが、この発表でいちばん押さえておきたいところです。

JALの国内線は、1搭乗につき5ポイントのLife Statusポイント(LSP)が積算されます。飛ぶたびに実績が積み上がっていく、あの1本。私たちにとっては前へ進むための場所ですが、会社にとっては、いま支えるのが難しい事業です。

国内線に成長が見込めないなら、会社は国際線へ向かいます。実際JALは、下期に欧州直行便の提供座席数を前年から16パーセント拡大します。国内線の話と国際線の話が、同じ時期に反対を向いて並んでいます。

これは怖い話ではありません。前提として知っておくと、これから出てくるニュースの読み方が変わる、というだけです。

いま慌てて何かをする必要はない

積み上げたLSPは勝手に減りませんし、今回の発表で減った便も1本もありません。やるべきことは、いつもと同じです。何が変わって、何が変わっていないのかを、自分の目で分けて読む。「ライバルが手を組んだ」という見出しだけでは、そこまで分かりません。中身を開けば、時刻が動いただけだと分かります。

なお、冬ダイヤ(10月25日以降)の調整後の具体的な出発時刻は、岡山空港の時刻表にも両社の公式リリースにも記載がありません。また、次にどの路線が対象になるかも、報告書は個別路線名を挙げていないため分かりません。

出典