ANAの決算を読むと、SFC改定が緩む見込みは薄い|売上は過去最高、営業利益率3.1%
この記事は2026年8月時点の情報です。 決算は四半期ごとに更新され、SFCの改定内容についてもANAは見直しの検討中であると公表しています。
スーパーフライヤーズカードの改定が発表されてから、同じ言葉をよく見かけます。「過去最高益なのに、なぜ会員を切るのか」。
その「過去最高」は本当です。ただし、過去最高なのは売上のほうでした。
結論:営業利益率3.1%の会社に、条件を緩める余裕は見えない
先に結論を書きます。2026年4〜6月のANAは、売上高こそ第1四半期として過去最高でしたが、営業利益は前年から4割以上減り、営業利益率は3.1%まで落ちています。 100円売って、手元に3円ちょっとしか残らない状態です。
「儲かっているのに会員を切っている」という前提は、この決算の前では成り立ちません。9月末に予定されている改定の見直しに大きな期待をかけるのは、数字の上では分が悪い、というのが率直なところです。
以下、その根拠を順に見ていきます。
ANAの2026年4〜6月:上と下で逆を向いている
| 項目 | 2026年4〜6月 | 前年同期からの変化 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,727億円 | 2割以上の増加(第1四半期として過去最高) |
| 営業利益 | 207億円 | 4割以上の減少 |
| 営業利益率 | 3.1% | 前年は6.7%。ほぼ半分 |
売上が2割増えて、利益が4割減る。この2行が同じページに並んでいます。
あれだけ大きな会社が、あれだけ飛行機を飛ばして、営業利益率3.1%です。
減益の理由は、ほとんど燃油ひとつ
なぜこうなったのか。理由はほぼ1つでした。燃油です。
飛行機に入れるケロシンという油の値段が、1年で2倍を超えていました。売上が2割増えたところで、燃料が2倍になれば、増えた分はそのまま吸い込まれます。
決算説明会の資料には、中東情勢の影響という言葉が何度か出てきます。遠くで起きていることが、私たちが乗る便の採算にまっすぐ効いている、ということです。
ここで、少し意地悪な見方をしてみます。利益率が3%しかない会社は、いま何を考えるか。
売上を増やす努力は、もうしています。過去最高なので。でも増やしたそばから燃油に持っていかれる。だとすれば、手を付けられるのは出ていくほうです。
そして航空会社にとって、出ていくお金には、燃油のように自分では動かせないものと、自分たちで決められるものがあります。ラウンジの席も、優先搭乗の運用も、後者です。
JALと並べると、減り方はJALのほうが大きかった
同じ時期のJALも見ておきます。
| 会社 | 売上 | 利益の減り方 |
|---|---|---|
| ANA | 6,727億円(第1四半期として過去最高) | 4割以上の減少 |
| JAL | 5,237億円(第1四半期として過去最高) | 7割の減少 |
注意点があります。 利益の指標は両社で取り方が違うため、金額をそのまま並べることはできません。上の表で比べているのは、あくまで前年からどれだけ減ったかという割合だけです。
同じ燃油、同じ円安を浴びて、この差でした。売上はJALも1割ちょっと増えて過去最高です。それでも利益の減り方は、JALのほうが大きい。
つまり今回にかぎれば、余裕があったのはJALのほうではありませんでした。CHIKATABIでは以前、この2社の決算を比べて「ANAの迷走とJALの余裕」という言い方をしていますが、その見立てはこの回で訂正します。
ではANAは何で持ちこたえたのか。国際線と、貨物と、そして航空以外の事業です。JAL側も資料に「多角化した収益基盤」という言い方で同じことを書いています。要するに両社とも、飛行機だけでは支えきれないところまで来ています。
決済額を判定に使う仕組みは、SFCの話ではなく収益構造の話
ここまで読むと、SFCの改定の見え方が変わってきます。
年間の決済額で区分を判定するという条件。そして、ANAカードだけでなくANA Payの利用額も合算するという仕組み。あれは上級会員を減らすための線引きだと受け取られました。
半分は、たぶん合っています。でももう半分は、この決算のほうを向いています。
飛行機で稼いだ分が燃油で消えていくなら、飛行機以外で稼ぐしかない。私たちの毎日の買い物を、自社の決済に集めるしかない。決済額を判定に使うという発想は、会員を選別する道具であると同時に、営業利益率3%の会社が日常の決済に活路を求めた結果でもあります。
改定の条件そのものは別の記事で整理しています。
9月末の見直しを、どう待つか
ここからは事実ではなく見立てです。ANAは見直しの内容を一切公表していません。
金額は動くかもしれません。条件の書き方も変わるかもしれない。ただ、決済額を判定に使うという骨格そのものは、たぶん残ります。 それがSFCの話ではなく、会社の収益構造の話だからです。意見が多かったから戻す、という種類のものではない、と読んでいます。
もちろん、だから黙って受け入れろという話ではありません。声を上げたから見直しになったのは事実で、それは意味のあることでした。
ただ、期待の置き場所は変えたほうがいいと思います。元に戻ることを待つのではなく、変わったあとの形を先に知っておく。そのうえで、自分がどこに立つかを決める。制度が変わるたびに路線を組み替えて、運賃を読み直して、また飛んできた。今回も同じです。
自分の決済額でどちらの区分になるかは、シミュレーターで確認できます。
出典
- ANA 2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料(PDF・ANA公式) ── 2026年7月29日発表。売上高・営業利益・営業利益率・燃油市況・中東情勢の記述はすべてこの資料のP.4「連結決算概要(第1四半期)」ほかによります
- JAL 2027年3月期 第1四半期決算(JAL公式プレスリリース 第26039号) ── 2026年8月3日発表。売上収益と減益率、減益理由、多角化した収益基盤の記述はこちらによります
- ANAスーパーフライヤーズカードの制度変更(ANA公式)
2026年8月24日時点の記載内容です。改定の詳細は2026年9月末までにあらためて案内される予定と公表されています。最新の内容は必ずANA公式サイトでご確認ください。